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著者らが実現した、上記のAR技術と作業工程管理機能、オンライン計測機能を統合した
検査作業支援システムでは、その対象として卓上におけるプリント基板検査作業を想定
した。しかし元々、卓上はマニュアルを併置し参照しやすい環境であることもあり、卓
上作業よりも工場プラント内のフィールド保守作業の支援の方が急務とされている。そ
れは、安全上できるだけ両手を自由にさせたい要請があり、またかさ張りやすいマニュ
アル
を持参することを避けたい、作業実施内容をノートに書き写す作業を除外したいことも
あり、AR技術を用いた作業支援環境が求められている。
プラント内のフィールド保守作業の多くは、広いプラント内に分散する検査対象(以降、
検査ホットスポットと呼ぶ)に巡回し、バルブやスイッチを開閉したり、計測器を当て
数値を読み取ることである。図1に示すように、作業全体は作業者の検査ホットスポッ
トへの移動と、検査ホットスポット内ので作業の二種からなる。本論文では、事故時の
緊急対応ではなく、通常時の保守検査作業を想定し、後者の個々の作業スポットでの作
業を支援対象とする。
ここでフィールドで移動しつつ作業するという場合、従来のARシステムにおいては問題
とならなかった点が、新たに浮かび上がってくる。
- I
- HMD装着の危険性
通常HMDは外界映像を遮断することにより、ユーザの視界の入れ替えを実現してい
る。そのためHMDを装着した作業者は外界を見ることができず、いわゆるビデオシー
スルー方式は突然の機器障害時に外界が監視できなくなり工作機械や作業車の接
近、階段、障害物などの状況を目視確認できなくなり、作業者の安全を確保することは
困難となる。
- II
- 位置・姿勢検出の制約
通常のVRシステムでは、作業者が実験室などの一定の環境を管理された範囲内で利
用することを前提としているため、作業者の位置や姿勢を検出するために計測可能領
域の狭いセンサや外部トランスミッタを必要とする磁気センサでも適用が可能である。
しかしプラント一般は広域であり、計測範囲や結線の問題により利用困難である。
- III
- 仮想環境生成装置の可搬性
実時間で作業者の視野全体の仮想環境を生成する必要性から、CGによるVR環境の生
成には通常高速なグラフィックワークステーションを利用する。しかし、このような
規模の装置は通常大形で重量もあり、このまま作業者が可搬して用いることは困難で
ある。
Yoshihiro Ban (yosihi-b@is.aist-nara.ac.jp)
1998年 9月 8日(火曜日) 14時30分