本論文では、空間上に分布する点の集合で表現された物体の3次元表面形状を取り扱うための手法を提案する。 近年、三次元形状計測装置により物体の形状を高精度に計測することが可能となった。 形状デザインの分野においてもこれらの装置は積極的に用いられるようになっており、 デザイナが手作業で作成したモックアップモデルを 3次元形状計測装置で計測し、その形状を数値化してコンピュータに取り込み、 それをもとに製品として生産するために必要な設計情報を作成していくという、いわゆる リバースエンジニアリングの手法が行われている。 本論文では、このリバースエンジニアリングの工程における計測データの処理に関する問題点について考察し、 それらを解決するための手法を提案した。 具体的には、位相情報が不明な計測データに対して位相情報を推定することなく、ユーザが表面形状を認識するためのレンダリングを行い、 ユーザが選択した表面領域の形状操作を行うための手法を提案し、検証した。
形状計測装置等で得られた接続情報不明の点群の
各点に対し法線情報を推定する。次に、
その法線情報をもとに、点群が全単写できる平面を作成し、
その平面上に2次元格子を生成する。各格子セル値として、
面から点までの距離を格納し、その値を
フーリエ変換によって周波数領域に変換する。
周波数領域において、フィルタを用いて
周波数分布を操作し、再び空間領域に戻す。
入力される点群はGUIインターフェイス上で選択し、
これら一連の操作は対話的な時間内で行われる。
また、用いるフィルタは目的によって柔軟に変更できる。
本研究で入力データとして想定する不規則点群は、
3次元空間における物体表面の位置情報を持った点の集合であり、
各点は接続関係や法線情報を持たない。
法線情報がないと、光源に応じて物体表面形状の陰影情報を推定ず、
ユーザが物体形状を認識することを困難にする。
そこで、まず不規則点群中の各点の法線を推定し、
視点に応じて法線の向きを決定する。次に、各点が視野に入っているかどうかを判定し、
視点からの遠さに応じて点の大きさを変更する。
これらの手順を行うことによって、各点同士の接続情報を推定せずに、
ユーザが物体表面形状を認識できるように不規則点群をレンダリングする。
実装したシステムのスクリーンショット。
ユーザはインタラクティブに点群を操作できる。
平滑化を行った場合 エッジ強調を行った場合 工業製品に本手法を適用
本論文では、レーザーレンジスキャナなどの3次元形状計測機器において
得られる、物体の形状表面に沿って分布する点群を扱う手法を提案した。
本手法の特徴は、点同士の位相情報などをもたない位置情報のみを持つ
点群に対して、位相情報を推定する工程を行わずに一連の操作を行えることである。
これらの成果は、従来CADやCGの分野で積極的に扱われてこなかった、
位相情報を推定されていない点群データのレンダリング・形状変形に関し、
今後更なる可能性が見出せるものであると考える。
つまり、デザイナの想像力を技術の制限によって阻害することなく、
むしろ技術によって想像力の飛躍を支援できるシステム構築への
基礎となりうるものであると考える。