背景
近年、血管内超音波イメージング(IVUS: Intravascular Ultrasound)
の研究が盛んに行なわれ、血管病変の診断が可能になってきた。
また、超音波血管内視鏡(IVUS用細径プローブ)の方は多様な種類が開発され、
今後急速に普及することが予想される。
超音波血管内視鏡では、カテーテル(体内に挿入し作業する
筒)先端に微小な超音波振動子を装着し、反射用ミラーを用いて超音波ビーム
をラジアル走査し、血管壁の断層像を得る。
超音波血管内視鏡の走査方には、機械走査方式と電子走査方式の二
種類がある。機械走査方式は電子走査方式に比べて、
- 走査線数が多くとれる、
- 内部の構造が簡単にできる、
- 超音波のパワーが大きいため解像度が優れる、
という利点があり、一般に広く使われている。しかし、機械走査方式では体外
モータに接続したワイヤで超音波走査を行なっているため、走査精度が悪く、
振動や反射用ミラーの不規則な回転に伴うワイヤの歪みが血管の破損を引き起
こす危険性が指摘されている。
以上の問題より、回転を伝えるワイヤを排した機械走査方式が望ましいことから、
我々はマイクロモータを用いた超音波血管内視鏡が提案した。
本手法では血管内にマイクロモータ駆動系を持つ超音波カテーテル
プローブを挿入し、超音波走査を行ないます。超音波は体外に設置されている
磁界により回転するマイクロモータによって走査

される。
血管壁に反射して返ってくるエコーデータから血管壁断面の画像を得ることができる。
今後、この手法を用いて一定の間隔で何枚かの血管壁断面の画像を得て、それらより血管壁
の3次元再構成を行なうことも予定としている。
研究で用いたマイクロモータ型超音波血管内視鏡(ミラーを装着した磁石、
超音波振動子、それらを加工したカテーテル)を図に示す。
こらは、永久磁石($SmCo_5$,直径1mm)、走査用ミラー($Al$,直径1mm)と
超音波振動子(直径1.2mm、共振周波 20MHz)

数10MHz)で構成されている。マイクロモー
タの回転は外部磁界によって行う。我々は、マイクロモータの回転が磁束密
度$0.15$mT以上及び、磁界の周波数が$25-110$Hz以内で安定していること
を確認した。
本研究で用いる超音波診断層像システムを図に示す。まず、
カテーテルを観察対象とともに水槽
中に設置、磁界発生用コイルは水槽外部に設置し、実験を行う。
つぎに、送波回路より振動子を励起後、観察対象からの反射波を再び同じ振動
子で受波し、その出力をディジタルオシロスコープ(LeCroy9354L)内の
メモリに蓄積する。その後蓄されたデータをGPIBを介してホストコンピュー
タ(Sun Sparc Station 20)に転送し、

17-23.5MHzのバンドパスフィルタを
用い、ノイズ除去を行う。フィルタリングされたデータをEthernet接続されたグラ
フィックスワークステーション(SGI Indigo 2)に転送し、観察対象の断層像再構
成を行う。
パルス送波位置を表示部の中心にとり、ラジアル走査方式
で得られた信号データから反射信号強度を放射状にグレースケールで順次並べ
るBモード表示により断層像再構成を行う。

- ファントム実験
実験対象として以下に示すプラスチックの円筒(外径11mmと内径8mm)を
用いた。マイクロモータ、ミラー、超音波振動子を含むカテーテルを実験対象と
共に水を満たした容器内に実験を行なった。マイクロモータの回転周波数は
60回転/秒、走査線数は167本、繰り返し周波数は$10KHz$とした。

プラスチックの円筒の再構成画像を図に示す。

図中のスケールは2.5mm間隔である。
再構成画像では、プラスチック円筒の外径は1.1mmである。また、図の中心(図中の'
+')より少々左側に表示されているのはカテーテルの再構成像である。
図よりガラス円筒の大きさ、形ともに正確に再構成されていることが分かる。
血管内可視化
このマイクロモータ型超音波血管内視鏡を用いて血管内可視化実験を行った。実験
に用いた血管は人間の腹部大動脈であり、国立大阪病院から提供させて頂いたもの
である。その血管の写真を次に示す。

次の図に我々のマイクロモータ型超音波血管内視鏡から得られたこの血管の
再構成像を示す。図中のスケールは2.5mm間隔である。
再構成画像では、血管壁は6-8mm以内に再構成されている。
図より血管の大きさ、形ともに正確に再構成されていることが分かる。
