近年、三次元形状計測技術を用いた遺物の立体保存に対する学術的要求が高まっている。遺物を三次元形状データとして立体保存することにより、容易に複雑な形状をした物体を再現したり復元することができる。また、そのデータベースを作っておけば、わざわざその複雑な形状をした物体が展示してある資料館などに行かなくてもネットワークでリモートアクセスすれば目的の複雑な形状をした物体を手軽に閲覧することも出来る。
立体保存の研究の一環として、レンジファインダから得られる距離画像を用いた立体計測に関する研究が行なわれているが、今現在の手法では複雑な形状をした物体では不可視領域(オクルージョン)ができてしまう。そこで現在用いられている広計測範囲のレンジファインダの代わりに狭計測範囲だが移動自由度の高い小型レンジファインダを用いることにより、従来の手法ではオクルージョンになってしまうような領域の計測が可能となり、オクルージョンの問題も解決される。しかし計測領域が狭いため物体全体の形状を得るためには、小型レンジファインダの計測データを統合する必要が生じる。
本研究では小型レンジファインダを用いた立体計測法と複数レンジデータの統合処理の手法を提案する。
下図に使用するシステムの構成を示す。位置姿勢装置と小型レンジファインダ、ワークステーションから構成される。
先ず、小型レンジファインダで対象物体を任意の視点から部分的に走査し計測する。それによって、小型レンジファインダから対象物体の断片的なレンジデータが、位置姿勢計測装置から対象物体に固定された座標系における小型レンジファインダの三次元座標とその姿勢のデータが得られる。この部分的走査を繰り返し、対象物体全表面のデータを取り込む。次に位置姿勢計測装置からのデータ(変換パラメータ)よりレンジデータを対象物体に固定された座標系の座標値に変換する。最後に座標変換された断片的なレンジデータを統合して対象物体の点表現で表された三次元点群モデルを得る。
前段階で得られた三次元モデルは点表現で表されたものである。点表現ではデータ数が膨大で不規則に並んでいる。これではCG表示に不適切なので、データ数を削減しデータを当間隔に並び変えるためにボクセル表現に変換する。ここで、もともとそのボクセルに点群データがいくつ入っていたかを形状(そのボクセル)の信頼度とする。
ボクセル表現はデータ統合が容易であり、しかもデータ点に一様性がありCG表示に適切である。
点表現からボクセル表現に変換する過程で付け加えたデータの信頼度を基にポリゴンを張る。
先ず、ノイズを削除するためにある閾値以下の信頼度のデータ(ポリゴン)を削除する。これはノイズが含まれるボクセルの信頼度が低いと考えられるからである。次に、ノイズを削除した三次元データの最も外側のボクセルの中心点を結び初期サーフェスの設定を行う。この初期サーフェスを構成する点の近接点でより信頼度の高い点があればそこに移動させる。これを初期サーフェスを構成する点全てにおいて行なう(サーフェスのフィッティング)。これによりサーフェス全体がより信頼度の高い方へと移動、つまり収縮する。これを繰り返してサーフェスを構成する点全てが移動しなくなったら収束したとみなし、その時点のサーフェスを最終的なサーフェスとする。
以上のようにして、信頼性の高いサーフェスモデルを得る。
小型レンジファインダとデジタイザ(位置姿勢計測装置)を用いた計測実験を行った。
対象物体として以下の四角錐の形状をした木製の物体を用いた。
その結果のこのようなサーフェスモデルが得られた。