The Frontal 3-D Imaging Method for Ultrasonic Intravascular Endoscopes in Japanese

血管内前方立体視化超音波イメージング(内容詳細)


目次

  1. 背景
  2. 超音波3次元瞬時映像法
  3. 実験システム
  4. 実験と結果


1.背景

血管の病気の1つに狭窄病変がある.狭窄病変とは,血管壁にコレステロール などが蓄積し,血液の流れを妨げてしまう病気である.軽い症状であれば,カ テーテルを狭窄部分に挿入し,バルーンを膨らませて狭窄物を押し潰すといっ た治療法を施すことが可能である.しかし,血管内が完全に塞がれてしまい, カテーテルの挿入が不可能な場合,現在は手術によって開胸などを行い,狭窄 物を直接取り除くしかない.その場合,病変部分以外の部位も傷つけてしまう ことになる.これを避けるために,カテーテルに装着したレーザ等で狭窄物を 焼き切る方法が考えられるが,狭窄物の位置,厚み,形状などがわからなけれ ば,レーザの出力過剰によって血管壁を傷つけてしまう可能性がある.事前に 狭窄物に関する情報を獲得できれば,レーザの出力,方向を決定できるが,そ のためには血管内の前方像獲得が必要不可欠である.

現在実用化されている超音波血管内視鏡は,超音波ビームのラディアル走査に よって,血管壁の2次元断層像を獲得する装置である.したがって,内視鏡の 前方に存在する狭窄病変箇所の観察は不可能である.そこで本研究では,超音 波リングアレイプローブを使用し,超音波球面波パルスの送受波による前方3 次元瞬時映像法を提案する.血管内前方を可視化することにより,狭窄病変箇 所の早期発見,治療が容易となる.


2.超音波前方3次元瞬時映像法

超音波球面波パルスの送受波によって,前方の3次元画像を瞬時に獲得する手 法を超音波前方3次元瞬時映像法と呼ぶ.超音波球面波は計測領域全体を1度 で照射することができるので,1回の送波・受波のみで計測が完了するが,本 研究では画像の解像度を上げるために,複数回送波による3次元瞬時映像法を 提案する.本手法による画像再構成方法を以下に示す.

1・計測領域を直交量子化(N個のボクセルに分割)する

2・振動子の1つ(送波子)から計測領域に向けて超音波球面波パルスを送波する

3・計測領域からのエコーを残りの振動子(受波子)で受波し,A/D変換後, それぞれの受波子に対応するメモリにエコーの振幅値を保存する

4・各受波子について,送波子→ボクセルi→受波子のパルス伝播時間を計算する

5・各受波子のメモリから,パルス伝播時間に対応する時間にあるエコーの 電圧値を取り出し,それぞれの絶対値を加算する

6・加算された値をボクセルiの輝度値とする

7・処理2〜6をN個全てのボクセルについて行う

8・処理2で使用した送波子とは異なる振動子を送波子とする

9・処理2〜8を振動子の個数分だけ繰り返す

10・処理6で得られた振動子の個数分の輝度値を足し合わせる

11・N個の輝度値を256階調に輝度変調する

12・輝度値に閾値を設定し2値化し,3次元空間上に距離画像として表示する


3.実験システム

リングアレイプローブの写真と構成を以下に示す.リングアレイプローブには 8つの振動子が並び,各振動子は中心周波数10MHzの超音波球面波パルスの送 受波が可能である.

実験に使用したシステムの構成を以下に示す.


4.実験と結果

以下に示した血管を用意し,その画像化を行った.血管は人間の大動脈の一部 分をホルマリンで固定したものである.また,中央部分を絞ることで,人為的 に閉塞部分を作った.閉塞部分は,完全に閉じた状態とした.

計測は,水中において,上図の左側に見える穴からリングアレイプローブを挿 入し,閉塞部分を観察できるように行った.計測領域は,リングアレイプロー ブの前方7.5mm離れた位置から3.2mm×3.2mm×6.4mm の大きさとし,計測領域 内を8×8×16 のボクセルに分割した.

本システムによって再構成した3次元画像を以下に示す.ワイヤーフレームは 計測領域を示し,0.8mmごとに描かれている.また,矢印は送波を行った方向 を示している.

前方に,閉塞の開始部分が確認でき,後方に終了部分も確認できる.本手法に よる画像獲得は,非常に短時間で終了する.フレームレートにすれば,約 4700images/secとなり,ビデオレートの30images/secと比べても非常に高速で あることがわかる.このことより,本手法が実時間計測に有効であり,走査式 映像法では不可能であった,血管壁や弁などの高速で変形する対象の計測や, プローブ自身が高速で移動しながらの計測に適していると言える.

本手法によって,現在使用されている超音波血管内視鏡では不可能であった血 管内前方立体視が可能となるため,臨床現場において狭窄病変の早期発見,治 療に役立つ新しい超音波血管内視鏡として,早期に実現されることを希望する.


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藤本 直登志 (naotos-f@is.aist-nara.ac.jp)