Shape Integration of Stereo Images and Surveyed Points for Historic Sites

ステレオ画像と疎な点群との統合による遺跡形状の取得(詳細)


目次

  1. 研究背景
  2. 計測の概要
  3. 計測手法1 - フィールドワーク -
  4. 計測手法2 - 計算機処理 -
  5. 実測例


1.研究の背景

近年、考古学の分野においてコンピュータが多く利用されるようになっており、その用途も多種多様である。 特に、遺物のデータベース化をする際、その全周囲にわたる形状や外観をすべて登録しておくことにより、さまざまな利用方法が考えられる。 たとえば、コンピュータグラフィックス技術を用いると、遺物をディスプレイ上に再現し、任意の視点から見ることができる。 あるいは当時の景観の再現をするのにも大いに役立つ。 また、どの位置・方向における断面図や外観図も作成可能なので、形状や色彩を数値的に扱うことができ、多変量解析をはじめとする遺物の比較や分類・分析に利用することができる。

このようなさまざまな技術に適用可能なデータは、遺物全周囲にわたる密な座標点群である。また、色彩を利用するためには、それぞれの座標点が色情報を持っているべきである。

現在の考古学における遺構などの実測図は、各方向から見た外観を特徴的な線分(稜線など)で描き、その周辺の特徴を描き添えたものが一般的である。 この図を得るためには、人間の多大な労力を必要とする。しかも線分の間を形作る面の形状(細かい凹凸)や色に関する情報を持たないため、正確に立体を再構成することは不可能である。

本研究では、フィールド計測の手間を削減し、しかも密で色彩情報を持つ立体データを獲得する手法を提案する。 立体再構成処理は、「ステレオマッチング法」という画像処理応用技術と、近年遺構計測に広く導入されつつある光波測量で得られるデータを融合することにより行う。


2.計測の概要

物体の全周囲にわたるデータを取得する場合、多数の方向から観測し、それらの形状データを寄せ集めて一つのデータとしてまとめあげるのが一般的である。

持ち運びが可能な比較的小さな凸物体であれば、回転テーブルの上にのせ、回転角度と関連づけながら種々のセンサを用いて計測することにより、全周囲にわたる三次元形状を取得することが可能である。 この場合、能動的に対象物に光を当て、光の当たった位置を別の角度からとらえ、三角測量の原理を応用して各部分までの距離を求めることにより、正確な形状を取得する方法がとられることが多い。

しかし、屋外の比較的大きな対象物を計測する場合、計測機器側を移動させながら形状データを取得せざるをえない。 しかも太陽光が非常に強いため、対象物に当てた光を検出する手法をとることは困難である。

したがって、光を当てる計測手法でなく、対象物そのものが持つ自然な色や模様を利用して、三次元形状を求める手法であるステレオマッチング法が屋外計測に適している。 しかしステレオマッチング法は二台の横に並べたカメラで撮影された二枚の写真(ステレオ写真)をもとに奥行き情報を得る手法なので、カメラ側の物体表面の情報しかなく、背面や物体内部の情報を持っていない。 したがって、全周囲にわたる形状を求めるためには、様々な方向からステレオ写真を撮影し、それぞれから得られる表面形状を張り合わせる必要がある。

得られる各表面形状は誤差を含み、統合が非常に難しい。そこで、それらの統合処理における骨組みともいえるデータを光波測距儀により測量する。

本研究で提案する手法は、

  1. 密な形状データと色彩情報を同時取得できるステレオ マッチング法
  2. 地球上に固定された座標系で対象物表面上の点の位置を計測できる 光波計測量
の二種の方法により得られるデータそれ ぞれの利点を生かして融合し、密度の高い遺跡の全周囲形状を得る手法である といえる。


3. 計測手法1 - フィールドワーク

遺構を計測するにあたり、フィールドで行なう作業は大きく分けて以下の二つのデータ収集である。 このとき、二種データ統合の際の指標となるカラーマーカを、それぞれのステレオ写真のオーバラップ部分に少なくとも3個のマーカが写り込むよう遺構に張り付けておく。 高彩度なカラーマーカを用い、画像中で識別可能なものにし、光波測距儀で座標を測定する。


4. 計測手法2 - 計算機処理 -

  1. 前処理
    1. 画像からのマーカ抽出
    2. 左右画像の回転補正
    3. ステレオマッチング処理
  2. データ統合処理
    1. マーカ点の対応関係を用いて、各方位ステレオ画像点の座標変換パラメータ初期値算出
    2. ランダム測定点の情報を用いて座標変換パラメータの修正


5.実測例( 乙女不動原瓦窯跡遺跡:栃木県小山市)

遺構実測における画像処理のながれはこちら


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永野 眞己 (maki-n@is.aist-nara.ac.jp)