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    タイトル

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VR技術を用いた幻肢リハビリテーションシステム
[修士論文]
[ポスター]
    幻肢とは

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幻肢とは,事故や壊疽などが原因で手や足を切断された患者が失われた手足がまだ存在していると感じることである. 幻肢を持つ患者の中には幻肢部位の麻痺や異常な動き,痛みに悩まされる人も少なくない.
幻肢が起きる理由は,筋肉や関節からのフィードバックがないまま信号が送られ続け,運動の出力が過剰に感じる場合や 脳にとって動かない四肢というイメージがインプットされているため,そのイメージが残ってしまう場合が考えられる.
    既存の治療法

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神経刺激療法
薬物療法
ミラーボックス療法

ただし,神経刺激療法・薬物療法はどちらも系統だった手法が確立されてるわけではなく, どこの病院でも気軽に行えるものではない.
    ミラーボックス療法

*
非侵襲かつ簡便に行える幻肢のリハビリテーション手法としてミラーボックス手法がある.
下の図に示したように天井が開いていて内部・中央に鏡が設置してある箱の側面に2つの大きな穴が空けられた箱を用いる.
患者はその側面の穴から両腕を入れる.

すると図にあるように存在する方の腕が鏡に映り,鏡側から覗き込めば両腕が存在するように感じる.
手や指を動かすと,
健常者の場合
のように,運動の結果を視覚と体性感覚の両方で認識し,それぞれの感覚の結果から次の行動に移ることが可能.
しかし,幻肢患者は
のように視覚で運動の結果を知ることができない.
また,体性感覚も正しい情報として認識できているわけではない.
鏡を用いることで
のように視覚を鏡で代用することができる.
鏡により正しいようで正しくない視覚の情報と,正しくない体性感覚が入力されることで 脳が刺激され,幻肢痛が緩和すると言われている.

視覚情報と体性感覚の不一致を引き起こすことが必要である.
    従来治療法の問題点

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必ずしも効果があるわけではない.
イメージしている幻肢と鏡に映った腕の形状が異なる場合に効果がない.
図にあるように箱に拘束される.
    目的

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従来のリハビリテーション手法では対応できないものにも対応する.
具体的には,イメージに合わせられるように部位の太さ・長さを可変にすること,部位が変更しても大丈夫なようにする.

これらを解消するために,失われた部位をVRにより作成する.
本研究では,幻肢のリハビリテーションを行うことのできるシステムを構築し,そのシステムを用いても 体性感覚に影響を与えることができるか検証を行う.
    システム

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図のようなシステムを構築した.
本システムでは,右手の肘から先を切断した場合を想定した.
患者は左上腕,左手首,右上腕にマーカーを装着する.
左上腕,左手首に装着したマーカーの関係から,右手首の位置の推定を行った.
患者の肩の高さにはディスプレイが設置してあり,患者自身から自身の腕を見ることはできず, ディスプレイに表示されたCGによる両腕を見ることになる.
ディスプレイに表示されるCGは
である.
    影響検証実験

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本研究では健康的な男女計10名に対して影響検証実験を行った. 実際のシステムは
である.
指示された目標位置に向かって被験者は手を動かす.
ディスプレイ上にはCGが表示される.表示されるパターンは,
両手の位置をきちんと追跡したCGの描画
CGの左手は追跡されて描画されるが,CGの右手の移動量は半分として表示
CGの左手は追跡されて描画されるが,CGの右手の描画はされない
である.
右手を置いた位置と実際の位置とのずれを位置感覚のずれとして計測した.
CGの提示方法により,被験者の位置感覚に影響を与えることが可能であるか検証を行った. また,実験においては右手のみを目標位置へと動かした場合,左手は左手用の目標へ, 右手は右手用の目標へとそれぞれの手を動かした場合,これらの比較も行った.
    影響検証実験結果

*
実験結果を示す.
以下の図は,各実験条件における被験者全体の平均値をグラフ化したものである. 図中において,目標位置より右手を手前に置いた場合は正,奥に置いた場合は負である.
また,図中の表記として,
LRM:右手のみ移動,CGの右手の正しい追跡描画
LM:右手のみ移動,CGの右手の移動量は少なく描画
NM:右手のみ移動,CGの右手は表示されない
LRMM:両手移動,CGの右手の正しい追跡描画
LMM:両手移動,CGの右手の移動量は少なく描画
NMM:両手移動,CGの右手は表示されない
とした.
右手のみ移動した場合の結果は
であり,両手を移動した場合の結果は
である.
また,それぞれの結果の有意差を算出した.有意差はWilcoxonの符号付順位和検定により 算出した.本実験において,有意差があるというのはその2点間で影響の差があったことを 意味している.有意差を調べた結果は
であった.
    考察

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・全体的に,目標位置が遠くなるほど右手を置く位置は目標位置よりも手前になり, 目標位置が近いほど右手を置く位置は目標位置よりも奥になった.
見下ろす姿勢の場合の傾向であると考えられる.

・CGで表示される右手の移動量が少ない場合,両手を移動させた場合,右手のみを移動させた場合の どちらにおいても最も影響があった.
CGの右手が被験者の予想している位置と異なる位置に表示された場合に体性感覚に 最も影響を与えることが可能であることが考えられる.
このことから移動量が異なるCGを提示することで,幻肢患者にも影響を与えることが可能 ではないかということが考えられる.

・ディスプレイの解像度について
本実験では一般的なディスプレイを用いた.鏡のような高解像度というわけではないが, 被験者の体性感覚に影響を与えることが可能であった.

・CGのリアリティについて
本実験で用いたCGのリアリティで影響を与えることが可能であったが,CGのリアリティの 変化により,影響の度合いが変化するか検証する必要がある.

・動作について
指など細かい動作を反映すればより幅広いリハビリテーションが行えるのではないか.
    まとめ

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CGの両腕を提示することによる幻肢リハビリテーションシステムの提案及び実装を行った.
提案システムにより,体性感覚に影響を与えることが可能か検証を行った.
CGの腕が被験者の想像と少し異なる動作をした場合に,位置感覚に最も影響を与えることが 可能であった.このことから,リハビリテーションを行う上でも患者自身の想像と少し異なる 描画をすることでより効果を与えることが可能ではないかという結論を得た.

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