研究


手術シミュレーションシステム 患者の解剖学的特徴を有した触覚提示

目的

手術は, 経験によって得た医者の能力と判断に左右される. もし, 本手術の前にその患者の手術をシミュレートすることが可能であれば, 医 師は最良の手術法を練ることができるだろう. また, それは医療事故の軽減にもつなが るだろう.

近年, それらの解決法としてVRを用いた外科手術のシミュレーションシステ ムが開発されつつある. それらのシステムは, 視覚提示と力 覚提示を行う. 視覚提示においては, 手術を受ける患者の形状情報が利用されている. そ れは, MRIもしくはCTの2D画像から作られた3Dのモデルを表示する. 一方, 力覚 提示において, モデルから返される反力は臓器切片の力学的試験により得た値で ある. そのため, その患者独自の病状に対しては, 画像に力覚が伴わない. そこで, より現実に近いモデルを生成するために, 患者の弾性特性を示す力覚 提示を伴ったシミュレーションシステムの開発を行っている.

弾性特性

Magnetic Resonance Elastography(MRE)とは, MR装置内で 弾性体を外部から振動を与えながら撮影することにより, 内部を伝搬する波を非 侵襲的に観察可能とする撮影法である. 内部に含まれる弾性体の硬さが変化すれ ば, 波の伝わる速さが変化し, 波長の違いとして画像に現れる. したがって, 局 所的な場所での弾性率は, MREにより得られた画像から局所的な場所での波の伝 搬速度や波長を解析することで求められる.

本システムは, Magnetic Resonance Imaging(MRI)で取得した形状情報とMREで取 得した弾性率を用いてモデリングを行う. 外力(ハプティックデバイスの入力)によるモデルの変形から反力を計算する. そして, その反力をデバイスを通して表現し, 同時に変形画像をディスプレイに 表示する. ハプティックデバイスには, PHANToM(SensAble Technologies, Inc)を用いる.

モデリングと近似方法

力覚モデルの構築方法として, バネネットワークモデルと有 限要素モデルがある. バネネットワークモデルは, 物体を立 方体もしくは四面体で分割し, それらの頂点(質点と見なす)間をバネとダンパ によって連結したモデルである. バネネットワークモデルは力-変位の特性を示 し, 物体の挙動をバネとダンパの力に基づく質点の運動で実現する. バネネット ワークモデルを用いた方法は, 力の計算が比較的簡単であり, 有限要素モデルと 比べ, 処理時間も短い. 一方, 物体を微小分割し生成される有限要素モデルは, 物体の硬さが分割形状によって変化することがないという利点を持つが, 計算時 間が長く, リアルタイム性に欠ける.

本システムは, 力覚モデルの構築にバネネットワークモデルを用い, 力の計算に差分法を適用している.