超音波リングアレイプローブによる3次元計測

1997年2月14日

南部雅幸


内容梗概

本ページでは、光学的計測が不可能な濁水中における超音波3次元計測について述べる。 本研究で提案する計測システムでは、超音波振動子を円状に配置したリングアレイ プローブを使用し、超音波球面波パルスの送受波によって3次元計測を行う超音波3次元瞬時映像法を適用している。


目次
  1. 背景
  2. 3次元瞬時映像法
  3. 実験システム
  4. 実験と結果

1. 背景

水中、特にビデオカメラ等の使用が困難な濁水中において物体の探索を行う場合 超音波による計測が有効となる場合がある。例えば高速増殖炉「もんじゅ」における ナトリウム漏出事故や、警察庁長官狙撃事件における短銃捜索、さらには日本海における ロシアタンカー「ナホトカ号」の座礁事故等の現場において超音波探査が検討され、 実際に使用されている。しかしながら従来の超音波探査の手法では、

・計測に時間を要する。
・測定対象の位置と形状を特定することが困難である。

といった問題があるため、すべてのケースにおいて有効というわけではない。 特に事故現場のような短時間で探査に急を要する場合には不向きである。 そこで

「そこに物体が存在するか」
「その物体は何か」を
「できるだけ速く」

知ることが可能なシステムの開発が急務であるとされている。 一方本研究室では従来より超音波リングアレイプローブによる前方三次元瞬時影像法の 研究がなされて来た。そこで本研究ではこの手法を応用し濁水中で高速に物体の計測 が可能なシステムの開発を目的とする。


2.超音波3次元瞬時映像法

リングアレイプローブは円上に配置された超音波振動子により、無指向性の超音波球面波 の送受信を行うことで、ビーム走査を行うことなく超音波3次元画像の獲得を実現する。 球面波を用いると計測領域全体のデータが一回の計測により得られるため、走査式映像法に比べ非常に短い時間で計測が可能である。

再構成アルゴリズム

1.計測対象に球面波パルスを送信する。
2.計測対象からのエコーは、反射体と各振動子との距離に比例した時刻に受信される。
3.各振動子によるエコー獲得時間に相当する距離を算出する。
4.各振動子からこの距離だけ離れた球面上のどこかに反射体が存在する。したがって この球面上のすべての点にエコー強度に相当する点数を与える。
5.すべての振動子についてこの処理を行い、点数を加算する。
6.あらかじめ設定した計測対象領域についてこの点数を輝度として表示を行う

この手法はいわゆる「開口合成」と呼ばれる手法と等価である。


3. 実験システム

以下に本研究で使用したリングアレイプローブと実験に 使用したシステムの構成を示す.

リングアレイプローブ

計測システム


4. 実験と結果

本手法を用いて木製資料の計測を行った。計測は清水中と濁水中で行った。

サンプル(円柱)

実験の様子

ビデオカメラによる光学像
清水中 <-----------------------------> 濁水中

再構成像
清水中 <-----------------------------> 濁水中

濁水中において清水中と差のない画像が獲得でできた。また計測に要した時間は 32msecであった。通常のビデオ画像は1枚の画像約33msecで表示していることより、 本手法を用いることで動画像の獲得が可能であると考える。