近藤 敦士
奈良先端科学技術大学院大学
情報科学研究科 情報処理学専攻
本ページでは,前方3次元情報を実時間で獲得可能な超音波3次元瞬時映像 法について述べる.本手法は,リングアレイプローブによって 超音波球面波パルスを送受波し,走査を行うことなしに 前方の3次元情報を獲得できる手法である. まず,超音波瞬時3次元映像法,実験システムを 構築し,ファントムの厚みの計測,血管の計測を行い, 1mm から 4mmの厚みが再構成できることを確認した.さらに,血管の計測により 血管内に付着させた脂肪を再構成 できることを確認した. 以上の結果から,本手法により,血管内の前方3次元情報を獲得できる 超音波内視鏡への利用の可能性が確認できた.
開発当初はガイドワイヤの先端は 硬い材質が使用されていたため血管を傷つけない様,慎重な 操作が必要とされた.その後,柔軟な材質を使用することで 操作性は向上したが,脂肪の石灰化などで狭窄物が 硬くなった場合,ガイドワイヤを突き通すことができない という問題が生じた.この問題を解決するために, ガイドワイヤの改良等が研究されているが,新しい方法として ガイドワイヤの代わりにレーザを用いた動脈形成術が考案されている . このとき,血管を傷つけないように, レーザの出力,射出方向には細心の注意を払う必要があり,それらの 決定には血管内の前方情報が必要不可欠である.
本研究では,新たな3次元画像化手法として 超音波3次元瞬時映像法を提案する. この手法では超音波球面波パルスを送波することで1度に広範囲の領域の 情報を獲得できるため計測時間が非常に短いという特徴がある. この手法の応用分野としては拍動する臓器の計測, 血管内の前方3次元計測が考えられる.
1.計測領域を直交量子化し,N個の小領域に分割する.
2.振動子の中から送波子を1つ選び,残りを受波子とする.
3.計測領域に向けて超音波球面波パルスを送波する.
4.受波子でエコーを受波し,エコー信号の強度を保存する.
5.各受波子について,送波子→小領域→受波子のパルス伝播時間を算出する.
6.各受波子で受信したエコー信号からパルス伝播時間に対応する時刻にお
ける強度を加算し,和を小領域における輝度値とする.ただし,
小領域が超音波球面波パルスの届く範囲にない場合は加算は
行わない.
7.手順5,6をN個の小領域全てについて行う.
8.別の振動子を送波子に選び,手順3から7を行う.これを全ての振動子について行う.
9.輝度値を256階調に輝度変調する.
10.輝度値に閾値を設定し,3次元像を2値表示する.
動脈内に沈着した狭窄物(石灰化した脂肪) に近い音響特性を持つ代替物の厚さの計測を行った.
まず,乳酸カルシウムとロウを混ぜ,均一な層を作成した. 層の厚さは1mmづつ変えて1mmから6mmまでのものを用意した. そして,作成した層をリングアレイプローブ の前方7mmに配置し,層の厚みの計測を行った. 計測領域はリングプローブの前方6mmから13mmの斜線部に設 定した.
厚さ2mmの時の再構成画像を以下に示す.表示領域は リングアレイプローブの前方6mm離れた位置から2mm×2mm×5mmの範囲とし, 10×10×50の小領域に分割した.
再構成画像での厚みと 層の実際の厚みの関係を以下に示す. 閾値は30とした.
1mmから4mmの厚みに関しては若干小さめに再構成 されたが高い相関を示している.これは代替物中での音速は水中における 音速よりも速いが,再構成画像では音速を一定としているためである. また,5mmより厚いものは再構成画像では4mm相当,もしくは それ以下の厚みしか再構成されなかった. これは,減衰のために4mmよりも厚いところからのエコーは 取得できなかったためと考えられる.
ホルマリンで固定した人間の腹部の大動脈の1部分を用意し ,中央部を絞ることで狭窄を形成し,さら に狭窄物の代替物の層を付着させ,計測を行った.
再構成画像を以下に示す.
上図における狭窄物の厚みは1.5mmであり, 先に示した再構成画像での厚みと 層の実際の厚みの関係より実際の厚みとの 妥当な一致が得られた.
以上の結果から, 現在市販されている超音波血管内視鏡では 不可能な血管内前方3次元可視化の 本手法により実現の可能性が示された .
血管内の前方情報が獲得できれば,より効果的で,安全性の 高いPTCA法が可能であり, 本手法を用いた超音波血管内視鏡の早期実現が望まれる.