遠隔超音波画像診断におけるCGを用いたロボット操作支援システム
概要本研究ではロボットを用いた衛星通信における 遠隔超音波画像診断システムの構築を目的とする。 そのためには、ロボットの操作信号、ロボットの動作を伝える画像、超音波動画像を 衛星回線を使用し通信する必要がある。 しかし、衛星通信における画像通信には 電波の伝搬時間、画像の圧縮、展開により 遅延が生じてしまい、 遅延が生じた画像を見ながらでのロボット操作は 非常に困難である。 そこで本研究ではロボット操作の支援として、 CGナビゲーションシステム を構築した。 CGナビゲーションシステムは、操縦者と遅延がほとんどないロボットのCGと 遅延したロボットの動作を伝える画像とを合成し、 遅延した画像の代りにCGを見ながら操作することで、遅延環境でも良好なロボット操作を行えるものである。 CGナビゲーションを適用することで、適用前に比べロボット操作にかかる時間を約半分に短縮することができた。 実際にこのCGナビゲーションシステムを使用し、 衛星回線を通して遠隔でプローブ操作を行い、 心臓の超音波画像を得ることができた。 本研究により遠隔医療におけるロボットの有効性を確認でき、 今後、他の医療処置へのロボット応用が考えられる。
システム構成遠隔超音波画像診断システムの基本構成を 以下に示す。

遠隔超音波画像診断を行うシステムは大きく分けて操作系、画像系、転送系に分かれる。 操作系は超音波診断において直接患者に触れ、良好な画像が得られるように操作しなければならない超音波プローブ、 プローブを遠隔で操作するためのロボット及びコントローラ、これらを制御する計算機から構成される。 画像系は超音波診断装置から生成される画像と、 左目、右目用の2台のカメラから得られるロボットの動作を操縦者に伝えるステレオ画像、ワークステーションへの画像取り込み装置、及び画像表示装置から構成される。 転送系はイーサネット、衛星回線から構成される。 操作系、画像系、転送系の3つを組み合わせることで、 基本的なシステムが構成される。
CGナビゲーションロボット操作は計測側から送られてくる画像を見ながら行うが、一般的にネットワークによる動画像通信には少なからず遅延が生じてしまう。 特に、ロボットの操作に関しては遅延時間が大きく影響してしまう。 ロボットへ操作信号を送るが、 ロボットの画像が操縦者に伝わるのは遅延時間の後である。 画像転送では遅延時間が数秒にもなってしまい、 操縦者は数秒前のロボットの画像を見ていることになる。 その間は操縦者は目隠しをしてロボットを操作しているに近い状態となり 正しい操作ができず、場合によっては患者に危害を与える場合も生じる。 この問題を解決するには遅延時間の間にも何らかの手段で ロボットの動きを操縦者に伝える必要がある。 遅延時間の間はロボットの動作を操縦者が知ることはできないが、 コントローラの情報は遅延なく操縦者が知ることができる。 さらにコントローラの情報によりロボットが動作しているため、 遅延時間の間はコントローラからの情報により ロボットの動きを把握することが可能となる。 遅延時間の間のロボットの動作を表現する方法として コンピュータグラフィックを用いる。 コンピュータグラフィックで描かれたロボットは、コントローラからの情報により 実物のロボットと同じ動作をすることができ、 操縦者との遅延はほとんどない。 このコンピュータグラフィックのロボットと、 実物のロボットを映し出している遅延のある画像とをスーパインポーズさせることができれば、 コンピュータグラフィックが動いた軌跡を、 遅延時間後に実物のロボットが 追従するようになる。 これは、コンピュータグラフィックが、 ロボットをナビゲーションするというシステムであり、遅延環境における ロボットの操作を支援することができる。

CGナビゲーションにより、ロボットを使用した作業にかかる時間を半分に 短縮することができる。 また、遅延時間が増加する環境であれば、それだけ CGナビゲーションの効果がある。
超音波プローブの遠隔操作実験CGナビゲーションを使用し、衛星通信によるネットワーク上で、ロボットを使用した 遠隔超音波画像計測を行った。 ステレオ画像を見ながら超音波プローブを遠隔操作し、 良好な超音波画像の撮像を目的とした。

超音波プローブ操作においては、 CGナビゲーションによりロボット操作は円滑に行えた。 良好な超音波画像を得るためのプローブ操作は非常に困難であった。 それは実際の診断で必要とされるプローブの操作の精度は 1〜2mm以下であるのに対し、 ロボットの精度は5mm程度であるからである。 しかし、5mmの精度のロボットでも心臓の撮像を行うことができた事実より、 1mmの精度のあるロボットならば超音波プローブの操作が円滑に行え、 良好な超音波画像計測ができると考えられる。 またプローブ操作においては、患者の体に超音波プローブを押しつける圧力が 超音波診断に大きく関わってくる。 この圧力情報の通信は良好な超音波画像を得るためだけでなく、 患者の体に危害を与えるような力を与えないためにも重要である。 ロボットに圧力センサーを取り付け超音波プローブにかかる圧力を測定し、コントローラがその圧力を操縦者に伝える力フィードバックシステムを採用すれば、 より高度な遠隔診断システムになると思われる。 圧力情報の通信の際、遅延が生じるという問題がある。 しかし、圧力情報は画像情報に比べ情報量が少ない。 ロボットの6軸にかかる圧力を、各軸2バイト(65536段階)で表現しても 12バイトの情報量であるため、画像通信に比べ遅延時間が少なくてすむ。 しかし、衛星通信を使用する場合は、電波の伝搬時間のため最低でも 0.25秒かかってしまうため、力フィードバックに支障を来す可能性がある。 この場合には、力フィードバック用の別回線として、比較的遅延の少ない有線回線を使用する ことが考えられる。
仮想環境における手術シミュレーション
現在、卓上コンピュータのディスプレイ上でマウスを使って行なわれている
手術シミュレーションにバーチャルりアリティの技術を応用し、あたかも自分が
手術室で手術をおこなっているような感覚を被験者に与えるシミュレーションシステムを構築することを目的とする。
この技術により研修医の教育はもちろんのこと、より現実に近い手術計画が
可能となる。例として心臓を摘出するシミュレーションを行っている図を以下に示す。
