男女識別の詳細説明


目次

  1. はじめに
  2. システム
  3. 見た目からの男女の違い
  4. 特徴抽出実験
  5. 特徴統合と識別の実行時処理
  6. 実験結果


1.はじめに

現代社会は、コンピュータのハードウェア、ネットワーク技術の進展およびマルチメディアや 通信ネットワークなどの社会基盤の整備によって、情報化はすみずみまで浸透しつつある。 これまではコンピュータは工場などの生産技術の中で使用されるのが主な目的であった。 しかしながら現在では、商業などのように私達の社会生活に密接な分野にまで コンピュータは使われるようになっている。 その中で様々な社会的情報を収集し、利用者にとってより使いやすい形に加工して提供する ことは非常に大切である。私たちの生活にとって情報は欠かせない存在となっている。

商業における情報のひとつとして、客の男女比率や年齢層などのマーケティング情報が ある。この情報に基づいて、客層に応じた経営戦略がたてられ、サービスの改善や 収益性の向上などにつながると考えられる。 大型百貨店においてはもちろんのこと、小さなコンビニエンスストアまでもが この情報を収集し、それを経営戦略にフィードバックしたり、意図した客層が集客 できているかを確認したりしている。しかしながら、データ収集の部分は人手に 頼っているのが現実であり、商業においてマーケティング情報の収集は 現在のところ全く自動化されていない。

また、画像認識の研究分野においては、人を自動認識・識別する研究が 近年盛んに行われている。静止画像や、動画像の中から人物のみを切り出す研究や、 顔画像などを用いてセキュリティチェックや個人識別、表情の認識などを行うものがある。 しかしながら、人物が男性であるか女性であるかを識別するような研究は現在ほとんど 行われていない。

そこで、本研究ではカラー全身像を用いて、特徴の抽出・統合によって男女を 自動識別する手法の開発を行う。


2.システム

本研究で対象とするシステムは、カラー画像を入力するカラービデオカメラと取り込んだ 画像を処理するWSによって構成される。 撮影された画像はWSの画像入出力インタフェースによってデジタル化してWSに入力され、 人物像抽出、特徴抽出・統合、識別などの処理により、男女識別を行う。 このように、本研究で構成するシステムはカラービデオカメラとWSのみを用いた ものであるので、デパートやコンビニエンスストアなどの入口に簡単に設置して使用する ことができる。システムの基本構成処理の流れを示す。


3.見た目からの男女の違い

人間から見た目による男女の相違点をランクづけしてにまとめました。計算機による抽出のしやすさも併記してあります。「もっと他に考えられるぞ」とか「これはおかしいんじゃないか」とか思った方は御遠慮なく私のほうまでメールを下さると幸いです。


4.特徴抽出実験

4.1 スカート線の抽出

入力画像中の人物がスカートをはいていると、太股から足首の上部の間に鮮明な 輪郭が現れる。この輪郭をここではスカート線と呼ぶことにし、このスカート線の ところで画像の明るさなどが急激に変化する。そこで、本研究では スカート線を抽出するため水平方向のエッジ成分を出すフィルタである 垂直方向のソーベルフィルタをかけ、得られたエッジ画像を 判別分析法による二値化を行って二値画像に変換する。それから、 スカート線が出ると思われる領域、ここでは全身の上から3/5以下かつ下から1/8以上の 領域に対して、垂直線上への投影を行う。すると、スカート線がある場所には、 エッジ成分のピークが現れるはずであり、このピークの値がしきい値以上であれば その水平線を抽出する。 さらに、その下部分に足と思われる領域があれば、抽出した水平線をスカート線とする。

この処理の流れと結果を示す。


4.2 髪の毛の抽出

髪の毛の抽出処理は、人物像の上から1/6部分に対して行う。まず、黒色領域と肌色領域を それぞれ抽出する。そして、黒色領域から肌色領域部分を除外する。最後に、額よりも上部に ある 黒色領域を取り除いたものを髪の毛領域として抽出する。この理由は、取り除いた部分の 髪の毛の量は男性でも女性でもさほど変わらないと考えられるからである。

この処理の流れと結果を示す。


4.3 服装の色の抽出

服装の色については心理学の知見に基づき、青色系は男性 色、赤色系は女性色であると仮定を行う。処理手順としては、服装中の各色の 画素数を求め、青色と赤色の割合を計算し、青色が多ければ男性的な服の色、 赤色が多ければ女性的な服の色であると評価を行い、識別部分に反映させる。

人物像から服装の色を抽出した例をここに示す。


4.4 口紅の抽出

現代の社会においては女性が外出する場合、化粧をしていることがほとんどである。 本研究では、 化粧において最もポピュラーなもののひとつである口紅に着目した。そこで、特徴抽出部で 口紅の抽出を行い、口紅が抽出されればより女性らしいとの識別を行うようにする。

口紅の色は赤色系であるものが多いので、抽出方法として単純に、 顔領域中の赤色領域を調べることで抽出を行った。

まず、全身像の上位1/6部分に対して黒色領域を抽出し、上位1/6部分との差分をとり、 ラベリング処理によってその最大連結成分を抽出する。これを顔画像として、その中の 赤色領域を取り出す。そして、赤色領域の最大連結成分を抽出することで、口紅部分の 画像を得る。その抽出手順および抽出結果を示す。


5. 特徴統合と識別の実行時処理

特徴抽出部で得られた4つの特徴より男性、女性それぞれの 特徴ベクトルモデルを性別既知の人物像を用いて構築する方法実際の識別部の処理について示す。


6. 実験結果

本研究の実験では、カラービデオカメラにより人物を含んだ画像を撮影し、 一旦ビデオテープに録画してから、シリコングラフィックス社の ガリレオボードを使用して画像をメモリに取り込み、INDIGO2を用いて処理を行った。 人物や背景は白熱灯照明を使用し、照明条件が一定の下で撮影した。 使用した画像は、男性36枚、女性19枚の合計55枚である。

55枚の画像に対して識別実験を行ったところ、全体の識別率は約90%となった。 識別までの処理時間は、シリコングラフィックス社のINDIGO2を使用したところ、 14.25秒/枚であった。識別結果をに示す。


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山瀬弘之(hiro-y@is.aist-nara.ac.jp)