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ウェアラブルコンピュータに適した高精細手書き情報生成のためのペンデバイス Pen-type Device for Hi-resolution Handwriting on Wearable Computer |
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■はじめに 世界には多くの遺跡があり, そこには様々な壁画が残されている. 有名なラスコーの 洞窟壁画は3万年以上前に描かれてたものである. このように, 人間は数万年前から 情報保存・情報伝達の一手段として道具を利用して``書く・描く"という行為を行ってきた. 手書きの大きな利点は文字・記号・図形等の統合的な情報を素早く 生成できる点である. 壁画から紙へと媒体を変え, 人類は多くの手書き情報を記してきた. 手書きが人類の文化・文明の発展に大きく寄与してきたことは言うまでもない. 近年のコンピュータの発明, 進化は情報生成に大きく影響を与えた. キーボードを利用して素早く文字・記号情報を生成し, マウス等の ポインティングデバイスとドローソフト等を利用して, 精細な図形を生成することが 可能になった. また, タブレットの開発によって手書き情報を直接デジタル化する ことが可能になり, CG作成を必要とするクリエイティブな分野等で普及している. そして近年, タブレットPCやPDA用のペンデバイス等のペンデバイスが開発され, 普及し始めている. これらのデバイスを用いることで, 実世界におけるノートや メモへの描画と同様な動作で手書き情報をデジタル生成することが可能になる. 現状では, これらのデバイスは情報の保存のみに特化しているが, 手書き情報が デジタル化されることは, 遠隔地間でのリアルタイムな情報共有も実現可能となる. 実世界での授業や会議のように, 手書き情報を利用して情報を伝達する環境を ネットワークを通じて広げることが可能になると考えられる. また, コンピュータの小型化や無線ネットワークの整備にともない, 「ウェアラブルコンピューティング」が実現しつつある. それらは, 身に付けたコンピュータによって「いつでも」「どこででも」 コンピュータを利用できる環境を作ることで, 日常生活において ユーザの行動を補佐・拡張することを目的としている. しかし, ``ウェアラブル"という環境である以上, マウスやキーボードを そのまま利用することはできない. 屋外での利用も可能な 入力インターフェースの開発が求められている. そこで「文字・記号・図形等の統合的な情報を片手で素早く生成できる」とい う手書きの利点を活かし, ウェアラブルコンピュータにペンデバイスを 導入することを考える. しかし, 既存のペンデバイスでは, 入力においてそれぞれ 固有の計測デバイス(タブレットの計測面, 赤外線による位置検出部等)を 必要とするため, モバイル性の高いデバイスではない. "ウェアラブル"という環境に適したペンデバイスの開発が求められている. これまでにもウェアラブルコンピュータで手書き情報を生成するシステムに関する研究が 行われている. 佐々木らは, "てのひらきゃんばす"において HMDに表示されたウィンドウ内で指先で描画を行うシステムを実現した. 椎尾らは, ジャイロと角度センサを内蔵したペンデバイスを用いて, 手首のひねりで描画を行うシステムを実現した. これら二つの共通点は, 書字面を必要とせず, 空中で描画を行う点である. 空中での描画動作は実世界のペンで描画する動作とは大きく異なり, 初心者には 難しく, 習熟に時間を要するという結果が出ている. また, ペンの支えとなる 書字面を利用しない空中での描画は, 従来のノートに書く文字のように精細な動作で 文字を書くことは非常に困難である. そのため, 人間が行ってきた手書きの動作に基づく ペンデバイスの開発が求められる. ■提案手法 ペンデバイスに求められる機能として
![]() 図1:提案システム ![]() 図2:処理の流れ 提案システムでは, カメラは書字面の上方から書字面を鉛直下向きに 撮像する. カメラから得られる映像の各フレームに対し, テンプレートマッチングを 行うことで, 画像内での相対的な移動量を検出する. また, 得られる画像と書字面が透視投影の関係にあると仮定すると, カメラの高さに応じて映される書字面の領域が変化するため, 高さ毎に相対移動量も 変化してしまう. 複数のレーザーポインタが書字面に生成する輝点の位置を カメラから取得し, ペンデバイスと書字面との位置関係を取得する. 計測された情報に基づいて, 相対移動量の補正を行ない、実空間での移動量を 求める. 得られた移動量をマウスカーソルに与え, またペンの高さから描画の ON-OFFの状態を判断し、ペイントソフト等で描画を行なう. ■試作ペンデバイス 試作したペンデバイスを図3に示す。 ![]() 図3:試作システム ![]() 図4:試作ペンデバイス ■実験 実験として"ペン先位置検出精度の評価"と"補正相対移動量取得精度の評価"を行った。 (1)ペン先位置検出精度 鉛直方向にスライドする台にペンデバイスを固定し、ペン先高さを0〜10mmまで1mm刻みで上げる。各高さでの書字面からペン先までの実際の距離と計測値の比較を行った。また、10度程度の角度を与えた際の面からペン先までの実際の距離と計測値の比較も行った。 ○実験結果 実験結果を図5、6に示す。 ![]() 図5:ペン先から書字面までの距離(傾きなし) ![]() 図6:ペン先から書字面までの距離(傾きあり) ○考察 傾きがある状態でも誤差0.1mm程度でペン先位置が取得できている。レーザポインタの輝点による書字面の方程式の算出が有効であることが確認できる。 (2)補正相対移動量検出精度 垂直方向にスライドする台にペンデバイスを固定し、ペン先高さを0〜10mmまで1mm刻みで上げる。垂直方向に10mm移動させたときの補正相対移動量の計測値を取得する。描く高さで10回試行し、計測値の平均値と標準偏差を算出した。また、10度程度の角度を与えた際の各高さでの補正相対移動量の平均値と標準偏差も算出し、実移動量との比較を行った。書字面として図7のようなドットパターンを用いた。 ![]() 図7:補正相対移動量(傾きなし) ○実験結果 実験結果を図8、9に示す。 ![]() 図8:補正相対移動量(傾きなし) ![]() 図9:補正相対移動量(傾きあり) ○考察 ペン先の高さが上がることによる補正相対移動量の減少が生じている。これは、画像上の相対移動量は離散値であるため、補正相対移動量には量子化誤差が生じるためである。高さが上がることで1画素に投影される領域が広くなるため誤差が大きくなっていると考えられる。 ■まとめ ウェアラブル環境で利用するペンデバイスとしてカメラとレーザポインタで構成されるペンデバイスを提案した。ペン先位置検出、相対移動量補正の実験を行い、細かな範囲でのペン先移動量取得が有効であることを確認した。しかし、現システムではペンの角度変化によって画像内での移動量を取得してしまう。ペンの角度変化を考慮したアルゴリズムの検討を今後の課題とする。 |