ウェアラブルコンピューティングのための光源環境推定手法


目的

ウェアラブルコンピュータ等の移動環境で使用するシステムにおいて、物体認識処理に色情報を用いる場合、光源環境による演色により物体の見かけの色が変化するので、認識処理が複雑になってしまう。光源による演色の度合いは、主に物体から光源までの距離、物体からみた光源の方向、光源色に影響される。これらの情報を取得できれば, 光源による演色の除去が可能となり、物体色の再現や、任意の光源による演色も再現可能となる。そこで、光源自体を直接撮影し、その場の光源環境を推定する手法を提案する。


提案システム概要

本手法では図1のように、補正対象のカメラとは別に専用の魚眼カメラを装着し、光源を直接撮影する。次に、撮影された画像から個々の光源の位置、方向、色を推定し、光源環境を構築する。構築した光源環境から指定された場所の演色の度合いを計算し、それをもとに補正対象のカメラの画像を補正していく。




図1.  システム概要

光源情報の取得

魚眼カメラで撮影された画像を天井に見立てた仮想平面に展開し、光源の形状と色を推定する。



図2(a).  展開前の光源画像
図2(b).  展開後の光源画像


光源形状の取得

本手法では光源形状を楕円形状に近似する。これは、光源の形状は一般的に方形、円形のいずれかであり、楕円近似するほうが、多角形近似するより情報が少なく、また、扱いやすいからである。従って、個々の光源の形状情報は、

  ・中心座標
  ・主軸角
  ・長軸長、短軸長

を取得すればよい。



光源色の取得

光源は一般的に光量が大きく、直接撮影すると画素値が飽和して、正しい光源色が取得できない。そこで、光源の周囲からの光は、その光源光からの反射光のみであるとし、さらに、周囲の物体色は白色またはそれに類する色であると仮定する。この仮定から、既存の光源色推定手法を適応することができる。本手法ではセンサ相関法[1]を、簡略化したものを用いる。変更点は、各色温度の光源色域の代わりに傾きを使用し、光源色域と画像色域を比較する部分を、色温度の傾きと画像色域の重心の傾きの比較に変更した点である。



図3(a).  変更前の比較モデル
図3(b).  変更後の比較モデル

演色の度合いの計算

取得した光源情報から、任意の位置での演色の度合いを推定することができる。本手法では、補正対象の表色系をRGBとし、その比を変更することで演色効果の除去や、任意の光源環境によって演色された色への変更を行う。


評価実験

図4のような光源環境の下で、図5のように白色板を設置し、実際の色(計測値)と本手法を用いて構築した光源情報をより演色された白色板の推定色(推定値)を比較することにより、本手法の有効性を評価する。



図4.  実験用光源環境
図5.  白色板のセッティング

計測値と推定値のRGB表色系における値と均等色空間における色差は表1のようになった。

表1.  計測値と推定値の比較

均等色空間において色差0.01程度であれば等色とみなせるので、表1より本手法が有効であることが確認された。

参考文献

[1] 富永 昌治, 石田 敦史, ブライアン A. ワンデル "センサ相関法によるシーン照明の色温度推定", 電子情報通信学会誌 D-II, J85-D-II, No. 5, pp. 886-987, 2002

この研究の詳細についてはこちら(pdf)をご覧下さい。

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